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型染めを巡る旅

型染を巡る旅

芹沢銈介   柳宗悦

型を使った染『型染(かたぞめ)』。

着物を扱うものにとってなんら特別な技法ではない『型染』の魅力に自分自身魅かれ出したのは、今思い返すと個人の『型絵染(かたえぞめ)』作家の方々の作品を拝見するようになってからだと思います。

それまで、小紋や名古屋帯などに施された染の数々は昔から続く万人向けの絵柄が多く、呉服屋という特殊な環境で育った自分にとっては無個性に感じていたのかもしれません。

それに比べて、型絵染作家の作品は、ともすれば 伝統的な日本 という枠も越えて、しかしそのルーツにはしっかりと日本を感じることのできる自由で独創的な作品が多くありました。それからというもの、時間の許す限り作家さんの工房を訪ねたり着物関連の書籍を読み漁っていくうちに2人の偉人にたどり着いていくわけです。

一人は型絵染作家 芹沢銈介(せりざわけいすけ) そして民芸思想家の柳宗悦(やなぎむねよし)

芹沢銈介は言わずと知れた型絵染という技法を確立した人物で、日本ではじめて型絵染の無形文化財保持者(人間国宝)なった人物

もうひとりの柳宗悦は当時華美な装飾を施した美術品が主流の工芸会において名もなき職人の手によって作られた生活日常品にも美術品に負けない美しさがあることを提唱した人物。(柳宗悦のことを書き始めたら、どれだけあってもきりがないので、機会があったらまた語ってみたいと思いますが、今回はこれぐらいで・・・)

型絵染作家芹沢銈介も柳宗悦ももうお亡くなりになっていて、いろいろお話することもできませんが、現在活躍されている型絵染作家の方々は芹沢銈介のお弟子さんであったり、親交があったり影響を受けた方が多く、この二人の偉人にたどり着いたのは必然かもしれませんね。

現在は日本人の中に多様な価値観が生まれ、着物やそれに携わる作家、職人にとってけっして恵まれた環境とは言えないかもしれません。染以外の仕事を生業としながら、都会の片隅でひっそりと作品作りを続けられている方も多く存在します。時間のある限り全国の大好きな型染と少しでも多く出会い、より多くの方に微力ながら知って頂くことができればと感じる今日この頃です。

型染とは

 

岡本隆志・紘子 型絵染

日本における型染の起源は奈良時代ともいわれています。そして鎌倉時代には型紙による型染がはじまり、江戸時代には武士の衣装から町人へと一気に広がりをみせます。

型友禅江戸小紋江戸更紗長板中型紅型型絵染めなど一口に型染めといっても様々あります。共通するのは型を使って染めていくということ。直接筆を使って輪郭を描いていくのではなく、型というフィルターを通って描き出される美。型紙というキャンパスから様様な個性が生み出されていきます。

多くの織物は、その土地の風土や気候、環境によって生まれ、育まれてきたため、その産地独特の技法が多くの人の手で守られ、地元に密着して現在に伝わっていますが、

型染めは生産効率を上げるためや同じ柄を繰り返し布に施す方法として生まれてきたため、世の中の流行やニーズをもとめて、産地を超えて全国に染の技術が散らばっていきました。

型染という手しごとの魅力

玉那覇有公私たちの町のように染めの産地と呼べない地域ですら、昔は染物屋さん(風呂敷や手拭い、法被などの着物の製造だけにこだわらない)が多く存在しました。それが、染めの技術の機械化、または需要の減少などで昔ながらの方法で染めている型染はますます減っているのは事実です。

型を使った手しごとによる染めはますます需要を減らしていく中、手しごとであることの意味はどこにあるのでしょうか?

手しごとの魅力を伝えるための型紙そして型染

職人さんの何十年にわたって培われてきた型彫や染の技術。一見完璧に見える染も、手しごとであるが故の微妙なズレやムラが存在します。そのズレやムラが機械で染めた無機質なものに比べて、仕上がりに奥行と立体感を生んでいます。もしかしたら、失われつつある技術へのノスタルジックがそう思わせるのか、それとも本当にそうなのかは断言できません。

 

しかしながら、私が思うのは手しごとのものには人のぬくもりや奥行を感じさせる何かがあるということ。

色々なことを知れば知るほど手しごとの魅力に引き込まれていくのです。

 

型絵染め

一般的に『型染め』とは、3枚重ねられ柿渋を塗った丈夫な和紙に柄を彫り、その型紙をもとに、着物や帯を染めていきます。この際、図案を考える職人、彫る職人、染める職人などそれぞれの工程は別の職人が分業で行います。つまり、その工程を受け持った職人の仕事はその工程で完結するのです。

一方『型絵染め』の場合は、1人の作家が図案を考え、型を彫り、染めを行うわけで、図案構想から完成まで一貫したコンセプトが存在します。とくに図案を染める人間が考えるというところに、型絵染めの最大の特徴があります。

『型染め』という言葉の中に、まさに作家の『絵』が存在するわけです。

それゆえに作家ごとに個性的なものが多く、まさに絹のキャンパスに描かれた、作品なのです。

 

型絵染岡本紘子

江戸更紗

エキゾチックな魅力の更紗。もとはインドを起源とする木綿につけられた文様で、アジアをはじめヨーロッパなどにも類似の文様が製作されています。

戦後、絹地に更紗を施すという現代の江戸更紗の基礎を作った名工三代目更勝、青木新太郎。更紗は完成するまでに、想像もできないぐらい手の込んだ工程を経ていきます。通常の小紋は多くてもせいぜい数枚の型を使えばいいところですが、更紗の場合、小紋では30~40枚近くの型紙を使い染めていきます。 

それが、重厚感と気品に満ちた気姿を生み出しています。

三代目更勝

琉球紅型

13~14世紀が起源とされ、古くは王族や士族の衣装として発展してきた紅型。紅型の『紅』は多彩な色、『型』は様々な柄を意味します。また紅型には単彩のものもあり、もっぱら藍だけを使う技法を藍型(イェーガタ)といいます。王族に愛された気品に満ち溢れた上質な着姿が特徴となります。 

 

紅型

人間国宝玉那覇有公さんの工房を訪ねて(2015年7月)江戸小紋

江戸時代の武士の裃(かみしも)に柄を付けたのが発祥といわれる江戸小紋。その一番の特徴は、反物一面に散りばめられた白抜きの繊細な柄です。江戸小紋は現在でも無地感覚の着物として紋を付ければ準礼装、紋を付けずに用いれば街着として着ることができ利用範囲の広い着物としてとても重宝します。一見無地に見えても、細かな柄があることにより無地とは違った何とも言えない立体感があり、着姿がきれいなのも特徴です。

 

江戸小紋

 

 

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